「病院以外の世界を見てみたい」「企業で自分のスキルを試したい」と考えたとき、多くの看護師の方が一歩を踏み出すことに不安を感じ、足踏みをしてしまいます。私がこれまで多くの看護師さんの相談を受けるなかで、この心理的なブレーキを「3つの壁」として整理しました。
この記事では、皆さんが企業転職を実現するために欠かせない自己分析の視点と、その壁を乗り越えて自分らしいキャリアを選ぶためのヒントを、私の経験を交えてお伝えします。ぜひ最後まで読んでみてください。
看護師が企業転職を考える際に直面する「3つの壁」
転職を意識した際、多くの看護師が以下のような心理的葛藤を抱えます。これらは個人の性格の問題ではなく、看護という特殊な職住環境や文化から生まれる共通の障壁です。
①自己肯定感の壁:自分になんて”無理”という思い込み
看護現場はミスが許されない極限の環境であり、できて当たり前、褒められる文化が少ないのが現状です。これが自己評価を下げ、企業への挑戦を躊躇させる要因となります。
- 看護師しかできないという閉塞感
専門職であるがゆえに、他の職種で通用するスキルを持っていないと思い込んでしまう。 - 否定的なフィードバックの影響
この病院でうまくいかなければどこに行っても同じ、といった上司からの言葉を真に受けてしまい、自信を喪失する。 - 達成感や成長実感の欠如
ルーチンワークや失敗できないプレッシャーの中で、新しいことへの挑戦や自身の成長をポジティブに捉える機会が少ない。
②周りの目の壁:キャリアの選択が”裏切り”に見える心理
家族や同僚といった周囲の反応を気にするあまり、自分の本当の気持ちに蓋をしてしまうケースです。
- 家族(身内)からの反対
特に親世代にとって、看護師は一生安泰な資格というイメージが強く、企業への転身をリスクと捉えられて反対される。 - 同期との比較と孤独感
現場で必死に頑張っている同期の中で、自分だけが抜けることに対して変な目で見られるのではないかという不安。 - 現場への罪悪感
深刻な人手不足の中、病院以外のキャリアを選ぶことが、仲間を見捨てる裏切り行為のように感じてしまう。
③もったいないの壁:過去の投資に縛られる”サンクコスト”
これまでに費やした時間、お金、労力を無駄にしたくないという執着です。
- 資格と経験への未練
苦労して取得した国家資格や、大学病院で数年間積み上げたキャリアを捨ててしまうような喪失感を抱く。 - 給与や待遇面での執着
夜勤手当を含めた現在の年収や、これまでの努力に見合うリターンを企業に求めてしまい、一歩が踏み出せなくなる。 - サンクコストの罠
すでに支払ってしまい戻ってこないコストに引きずられ、これから得られるメリットを冷静に評価できなくなる。
企業転職への迷いを解消する「自己分析」と判断基準
「もったいない」と感じたときこそ、客観的な自己分析と経済学的な視点を持つことが重要です。
自信のキャリアの選択における意思決定において最も大切なのは、「これまでいくら使ったか」ではなく「これからどうなりたいか」という未来への自己分析です。過去に費やしたコストを計算に入れず、今後発生する「追加のコスト」と「得られるメリット」だけを純粋に比較することが、後悔しない企業転職への近道です。
看護師から企業転職を成功させるための環境作り
大前研一さんの有名な言葉で有名な言葉あります。
人間が変わる3つの要素(大前研一氏の言葉より)
人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは、『決意を新たにする』ことだ。
3つの壁を乗り越えるために有効なのは、つきあう人を変えることです。身近に企業転職を実現したロールモデルがいないのであれば、そうした人が集まるコミュニティやイベントに足を運び、新しい「当たり前」に触れることが、自己肯定感を高めるきっかけになります。
自分自身の意識を変えるのは難しいもの。だからこそ、「決意を新たにする」のではなく、自己分析を深められる「環境」を変え、つきあう人を変えることから始めましょう。決してこれは、これまでの友人関係を断ち切れと言っているわけではなく新たな環境、サードプレイスのような場を見つけましょうということです。
ArchNurseでは様々な業界・業種で働く看護師が集まりキャリアの交流ができる「ふらっとなかめ」を毎月1,2回開催しています。

企業転職の壁を乗り越えるための5つのステップ
漠然とした不安を解消するには、適切な自己分析を行い、行動を小さなステップに分解することが有効です。
- 自己分析:自分の価値観や強みを棚卸し、言語化する。
- イベント参加:企業で働く看護師のオンラインセミナーなどに参加する。
- 他者との対話:キャリアコンサルタントや企業転職の経験者と対話する。(ふらっとなかめ等)
- 転職活動:実際に求人に応募し、企業側のニーズを知る。
- 転職:自己分析で導き出した新しい環境でのキャリアをスタートさせる。
ここで強くお伝えしたいのは、転職をすることがゴールではありません。転職はあくまで手段ですので③まで進んでみて、今の職場で頑張るという選択もとても素敵な選択です。壁を感じ、閉塞感を感じたまま仕事に取り組んでいるのはよくない状態です。重要なのは、壁を乗り越え、靄が晴れ、自分の今に納得できている状態をつくることです。
Archnurseは「選ぶたび、私になる」を実現していきます。
看護師の資格や経験は、決して「捨てる」ものではありません。自己分析を通じてそれらを再定義し、新しいフィールドでどう活かすかを考えることが大切です。
「もったいない」という過去への執着を解き放ち、これからの自分が得られるメリットに目を向けてみてください。一歩踏み出した先には、今、見えなかった新しい景色が広がっています。

