看護師のキャリアを支援に15年以上関わってきたキャリアコンサルタントとして、伝えたいことがあります。転職サイトの広告に流れてくる甘い言葉は、あなたのキャリアの悩みを解決してくれる魔法ではありません。一歩立ち止まって、本当に大切なことを見つけませんか。
そのクリック、ちょっと待って!
「看護師を辞めたい」そう感じたときに、なんとなく眺めているスマホの画面に、流れてくる転職サイトの広告が「人間関係が良い」「高給与」「残業なし」といった魅力的な言葉の数々は、まるで自分を救ってくれる魔法のように思えますよね。
でも、ちょっと待ってください。広告をクリックして転職を進める前に、一歩立ち止まって考えてみませんか?あなたの悩みの根本は、本当に転職サイトの広告が提示する甘い言葉で解決できるのでしょうか。
その転職、本当にあなたの悩みを解決しますか?
転職エージェントは、あなたの転職をサポートしてくれます。転職活動をスムーズに進める上で有効活用することは大切です。しかし、彼らのゴールはあくまで「転職ありきで、転職を成功させること」です。紹介会社やエージェントはそれが役割であり、それによって助けられている求職者、事業所も知っているので、決して悪く言うつもりは一切ありません。ただ、そのエージェントを利用する側がその役割を正しく理解して活用することが何よりも大事だということを伝えたいです。
安易な気持ちで次の職場に移ると、以下のような事態に陥る可能性があります。
- 人間関係の悩みが再発する
- 給与は上がったが、業務内容が合わず新たなストレスを抱える
- 残業は減ったが、スキルアップの機会を失ってしまう
「とりあえず転職すれば解決するだろう」という考えは、かえってあなたを苦しめる結果になりかねません。転職エージェントは、あなたの長期的なキャリアや人生全体の幸福までを約束するものではありません。
「とりあえずの転職」は、エンジンの不調を放置してタイヤだけ交換するようなもの
あなたの「辞めたい」という気持ちは、車から発せられる「異音」と同じです。エンジンの不調を放置してタイヤだけ交換しても、根本的な問題は解決しません。もしかすると一時的に快適に走れても、またすぐに不調が起こり、もっと深刻な故障につながるかもしれません。
「辞めたい」という異音の正体を突き止めないまま転職しても、また同じ悩みを抱え、最終的には「看護師自体を辞めたい」と考えるほどに追い詰められてしまう人も少なくありません。
あなたのキャリアの「異音」の正体は?
まずは、あなたのキャリアの異音(モヤモヤ)の正体を整理してみてほしいです。いろいろな診断ツールもありますが、私個人としてオススメなのはノートとペンを用意して、少し日常から離れた静かな場所で頭の中にあるモヤモヤを書き出してみることです。具体的にはこんなことを書き出してみてください。
仕事内容ややりがい
- 「今の病棟の仕事が合わない」
- 「専門性を高めたいのに、スキルアップの機会がない」
- 「ルーティンワークが多く、新しい知識や技術を学べない」
- 「理想とする看護と現実のギャップを感じる」
人間関係
- 「特定の上司や先輩との関係に悩んでいる」
- 「チームの連携が悪く、孤立していると感じる」
- 「他職種とのコミュニケーションが円滑に進まない」
- 「患者さんや家族との関係構築が苦手」
待遇や給与
- 「仕事の責任に対して給料が低すぎる」
- 「夜勤や残業が多く、割に合わない」
- 「昇給やキャリアアップの道筋が見えない」
- 「業務内容の割に手当が少ない」
働き方やライフスタイル
- 「不規則な勤務で体調を崩した」
- 「プライベートと仕事の両立が難しい」
- 「有給休暇が取得しにくく、心身ともに休まらない」
- 「将来的に家庭を持ちたいが、今の働き方では不安がある」
転職活動をスタートする前に、正しい自己理解をしましょう
キャリアの異音(モヤモヤ)について書き出したものを自分の中でもう少し整理したり深掘りしていきましょう。そして、その真因の解決策が転職以外でもないかを探してみましょう。あなたの「辞めたい」という気持ちが、本当に転職でしか解決できないものなのか、じっくり考えてみましょう。
自分自身と向き合う
- 「辞めたい」と感じた具体的な出来事を書き出し、なぜそう感じたのか、自分の感情を深掘りする。
- 逆に、仕事で「嬉しい」「楽しい」と感じた瞬間も思い出してみる。
- これらの出来事から、あなたが仕事で「絶対に譲れないこと」は何なのか、価値観を言語化してみる。
今、いる環境で解決策を探してみる
転職を決断する前に、今の環境で解決できることはないか、もう一度考えてみましょう。一人で抱え込まず、頼れる人に相談することも大切です。
- 部署異動
今の部署の人間関係や業務内容が原因なら、他部署への異動で解決する可能性があります。 - 上司や相談窓口への相談
働き方や待遇に不満がある場合は、まずメンターや上司に相談してみましょう。職場によっては、第三者の窓口に相談できる場合もあります。 - 信頼できる人への相談
家族や友人、頼れる同僚や先輩など、第三者の視点から話を聞いてもらうだけでも、考えが整理されたり、新たな気づきが得られたりすることがあります。ArchNurseのプチメンターもぜひ活用ください。
転職だけが解決策ではないと知る
もちろん、職場内で解決できない問題や、職場そのものに原因がある場合は、転職が最善の選択肢となる場合もあります。しかし、それは自分の課題を正しく理解した上で選ぶからこそ、後悔のない選択になるのです。転職活動前のこの時間が、中長期的なキャリア形成において大切なプロセスとなります。
「辞めたい」は、あなたの心がくれた大事なサイン
「辞めたい」という気持ちは、決してネガティブな感情ではありません。それは、あなたの心が「このままではいけない」と必死に訴えている、とても大事なサインです。
人はなぜ、辛い状況にいてもなかなか動けないのでしょうか。それは、「この環境を変えることは大変なことだ」という無意識の抵抗感があるからです。さらに看護師の業界には「せっかく看護師になったのだから…」とか「せめて3年は続けてみないと…」といった周囲の考えが根強く残っており、本人の心をさらに追い詰めてしまうのです。
だからこそ、そのサインを「とりあえずの転職」でごまかさないでください。まずは「辞めたい」という気持ちを、あなたの人生をより良い方向に導くための「貴重な情報」として受け止めてその課題を正しく理解することから始めましょう。
この「自分と向き合う」という作業は、自分の弱さとも向き合うことになるため、一人だけでするのは簡単なことではありません。だからこそ、家族や信頼できる友人、同僚など、第三者の力を借りてでも、自分の心を整理する時間を大切にしてほしいです。ふらっとなかめもそんな心を整理する場所の1つとして是非、活用してもらえたら嬉しいです。

自分の心に耳を澄まし、課題を正しく理解した上で解決策として転職を選択したのであれば、それはあなたの人生を良い方向に導く強力な選択肢となります。焦らなくて大丈夫です。あなたの人生は、今この瞬間が一番若く、まだまだこれからです。

