「納得感」のあるキャリアを求め、PICUから訪問看護、さらにコンサル企業へと転身したみのすけさんのインタビュー記事です。臨床現場での葛藤をきっかけに、未経験から異業種へ挑んだ具体的なプロセスや戦略、企業で直面したリアルな壁までを赤裸々に語ります。キャリアに悩むすべての看護師にとって、新たな選択肢を知るきっかけとなり、コンサルに興味のある方にとっては必見の内容です。
この記事を書いてくれた人

みのすけさん
キャリアに迷う看護師へ”病院以外の選択肢”を
「看護師は病院が全て」と不安だった過去の私。PICU→訪問看護→大手企業(医療DX)へ。
看護師としての原点と、急性期から在宅へ踏み出した理由
なぜ看護師を目指しましたか?
看護師を目指した理由は、大きく2つあります。
母の存在
母が看護師で、「手に職を持つ仕事に就いたほうがいい」と言われて育ったことです。「まあおかんが言うなら間違いないか」と。
男性看護師との出会い
中学1年生の頃、膝の手術で入院した際にはじめて男性看護師と出会いました。とても優しく、そして何よりかっこよくて、「自分もこんな看護師になりたい」と思ったことが、強く心に残っています。
病棟看護師時代(PICU)の経験
看護師として最初に働いたのは、PICU(小児集中治療室)でした。とにかく忙しく、体力的にも精神的にもハードな環境でした。
勤務形態は
日勤:9時~17時
準夜:17時~1時
深夜勤:1時~9時
いわゆる「日深」と呼ばれる勤務が特に辛かったのを覚えています。
PICUは、子どもの命に直結する現場です。毎日、複数のモニターや医療機器、点滴に囲まれ、子どもの状態変化を見逃さないようにPDCAを回しつつ看護をする毎日でした。大変ではありましたが、看護師として非常に密度の濃い時間を過ごしていました。
PICUには、重い障害を抱える子どもたちも多く入院しています。2年間働く中で、次第にこんな疑問を抱くるようになりました。
- この子たちは退院後、どんな生活を送っているのだろうか
- 家庭で安全に暮らしていけるのだろうか
- 家族は看護をし続けることは可能なのか。
この子達の「病院の外の生活」を知りたい。そう思い、小児も対象としている訪問看護へ転職することを決めました。
「生活」に深く入り込む訪問看護で見つけた自分の土台
訪問看護師時代のエピソードを教えてください。
訪問看護では、小児を中心に担当しながら、初めて成人や高齢者の利用者さんも受け持ちました。正直、最初は「何が正解なんだろう」と悩むことばかりでした。先輩に教わったことを頼りに、”トライアンドエラー”を繰り返しながら、少しずつ経験を積んでいきました。
訪問看護は基本的に1人での対応です。新しい利用者さんを初めて訪問する時は、毎回とても緊張していました。それでも、毎日が楽しく、仕事が辛いと感じたことはほとんどありませんでした。正直、天職だと感じるほど、訪問看護の仕事が好きでした。
訪問看護ほど、利用者さんの「生活」に深く入り込める仕事はないと思います。実際に関わる中で、
- どんな環境で暮らしてきたのか
- どんな思いを抱えながら生きてきたのか
そうした背景に触れる機会が多くありました。一人ひとりの人生が凝縮された空間に関わる経験は、今の自分の価値観や考え方の土台になっていると感じています。
コンサルへの挑戦。憧れから始まったキャリアの転換点
訪問看護から企業への転職を考えたきっかけを教えてください
そんなふうにやりがいを感じていた訪問看護でしたが、周囲の優秀な看護師と自分を比べるようになり、次第にこんな思いが湧いてきました。
「このまま看護師として、ただ毎日を過ごしていくだけで、本当に悔いのない人生と言えるのだろうか」
この問いが頭から離れなくなり、「自分はこれからどう生きていきたいのか」を、改めて見つめ直したいと思うようになりました。
そこで、知人の紹介やX(旧Twitter)をきっかけに、「この人、なんだかすごそうだな」と直感的に感じた看護師の方に、特に深く考えず、突然連絡をしていました。(今思うと、なかなか変な行動力ですよね)
そんなメッセージを送り、複数人に話を聞かせてもらいました。その中の一人が、コンサル企業で働く元看護師でした。仕事の話をする姿はとても生き生きとしていて、毎日が充実しているのが伝わってきました。
特に印象に残ったのは、話し方、立ち振る舞い、雰囲気、そうしたすべてが魅力的で、強く惹かれました。そして、「企業で働く」という選択肢、さらに働くならコンサル企業という道を、初めて意識するようになりました。
「落ちるはずがない」と言えるまで。戦略的な転職活動の舞台裏
コンサルへの転職活動はどのようにしましたか?
この段階で、自己分析はある程度終えており、「コンサル企業で働く」という方向性自体はすでに決めていました。
一方で、当時の自分の実績を冷静に振り返ると、正直、このままでは受かる要素はほとんどないと感じていました。そこで、すぐに転職活動を始めるのではなく、あえて半年間の準備期間を設け、実績づくりを戦略的に行うことにしました。
この半年間で取り組んだことは、主に以下の通りです。
- 実績づくりを目的とした企業インターンへの参加
- 厚生労働省関連事業への参画
- 資格取得に向けた勉強
- 面接対策(フェルミ推定、ケース面接対策)
正直、この半年間はかなりハードでした。常に「次に何を積み上げるべきか」を考えながら、時間をやりくりする日々でした。それでも、ここまでやり切ったからこそ、「これで落ちたら仕方がない」ではなく、「ここまでやったのだから、落ちるはずがない」という自信を持って、転職活動に臨むことができました。
結果として、第一志望としていたコンサル企業から内定をいただき、その会社に就職することを決めました。
未経験からコンサルへ。成長痛の中で見つけた新しい自分
転職をしてみてどうですか?良かったこと・苦労したこと
良かったこと
良かった点は、間違いなく成長できる環境であることです。世間でよく言われる通り、周囲には想像を絶するほど頭の良い上司や、自分よりもはるかに頭の回転が速い後輩がたくさんいます。いわゆる「シゴデキ」が当たり前の環境です。そんな人たちに囲まれながら、毎日強い刺激を受け、自分の未熟さを突きつけられ、それでも一歩ずつ前に進む。そんな日々を過ごす中で、確実に成長している実感があります。
苦労したこと
一方で、苦労したこともたくさんありました。まず大きかったのは、「環境そのものの厳しさ」です。周囲には、有名大学出身のエリートだらけです。やはり、容量がいいだけでなく努力するのが当たり前の集団です。そんな人たちと常に比較される環境の中で仕事をする必要がありました。置いていかれないように、歯を食いしばって仕事をする日々でした。
次に苦労したのが、「思考やコミュニケーションの違い」です。
- 結論から話す
- 論理で説明する
- 横文字が当たり前に飛び交う会話
これまでの看護師としての感覚とは、まったく別の世界でした。そして最後に、「業務スキルの不足」です。
- 議事録の作成
- PowerPointでの資料作成
- Excel・Wordの操作
看護師時代にはほとんど触れてこなかったこれらのスキルが、企業では「できて当然」の前提で求められました。入社前に多少の勉強はしていましたが、正直まったく足りず、業務の中で覚え、行き帰りの電車で少しでも早く仕事できるように各ドキュメントのショートカットを調べながら身につけていく毎日でした。最初の1年間は、とにかくしんどかったです。(もちろん、今でも大変だと感じる瞬間はあります。)
企業転職をして気づいたこと
企業で働くようになって、最も大きく変わったのは目標の立て方です。
- 1日単位で短期目標を立て
- 週単位で振り返り
- 月次でさらに評価する
このサイクルを回し続けることの大切さを、身をもって学びました。少しでも早く成長するために、今の自分に「何ができて」「何ができていないのか」、できていないことを「いつまでにできるようにするのか」、これを常に考えながら生活するようになりました。自分を追い込みながらも、その分、日々の成長を実感できる。それが、企業で働く中で得た一番大きな学びです。
看護師の選択肢を広げ、誰かの「分岐点」になるために
これからやりたいことは?
本業の話と一貫性がないように見える方もいるかもしれません。しかし、自分は、訪問看護師時代に出会った「自分のキャリアの分岐点」となった方のような存在になりたいと考えています。誰かの人生やキャリアにおいて、立ち止まって考えるきっかけをつくれる人でありたい、という想いがあります。
そのために、これからは看護師のキャリア支援を軸にした活動をしていきたいと考えています。具体的には、
- 看護師が自分の価値観や強みを整理するための対話
- 「辞める/辞めない」ではなく、選択肢を知るための情報提供
- その人らしい働き方・生き方を考えるための伴走支援
こうした関わりを通じて、一人ひとりが納得感を持ってキャリアを選べる状態を支援していきたいです。そして、自分が関わった誰かが、次の誰かのキャリアの分岐点になっていく。そんな好循環が生まれる社会をつくることが、最終的なゴールです。
その結果として、すべての看護師が「選択肢を知らないまま働く」のではなく、選択肢を知った上で、自分自身でキャリアを選べる。そんな状態が当たり前になる世の中を目指しています。
まとめ(編集者コメント)
みのすけさんのキャリアは、目の前の業務に全力で向き合いながらも、常に「その先」にある社会や自分の人生を見つめ続けてきた結果だと感じました。
特に印象的だったのは、コンサル企業への転職にあたり、半年間という準備期間を設けて戦略的に実績を積み上げた点です。単なる「憧れ」で終わらせず、自分の未熟さを客観的に捉えて埋めていくその姿勢は、職種を問わずキャリアを切り拓くための本質ではないでしょうか。
現在は厳しい環境で成長を続けながら、かつての自分と同じように迷う看護師たちの「分岐点」になろうとしているみのすけさん。彼の活動が、看護師の新しい可能性を広げていくことを期待しています。

