あなたはどちらを選びますか?
突然ですが、あなたに質問です。もし、次の2つの選択肢があったとしたら、どちらを選びますか?
【A】時給3,000円で働く
【B】自分で作った商品やサービスを3,000円で売る
多くの看護師・保健師の皆さんは、「A」を選ぶかもしれません。なぜなら、Aは確実で、時間を費やせば必ず3,000円という対価が手に入るからです。決められた業務をこなすことで得られる収入は、計算が立ちやすく、安定しているように見えます。
一方、Bはどうでしょうか。自分で商品やサービスを作るなんて、何から手をつけていいか分からない。そもそも売れる保証もないし、3,000円の価値を生み出すまでには、時給労働以上の時間と労力がかかるかもしれない。そう考えると、Bはあまりに不確実で、非効率的に思えるかもしれません。
短期的に見れば、その判断は正しいでしょう。しかし、これを「キャリア」という中長期的な視点で捉え直したとき、その意味合いは大きく変わってきます。時給で働く1時間と、自分の価値を届けて対価を得る経験。この二つの間には、単なる収入の得方以上の、決定的な「違い」があります。
この記事では、多くの看護職が陥りがちな「時給思考」の罠と、そこから抜け出し、自分らしいキャリアを築くための新たな視点について、キャリアコンサルタントの立場からお伝えします。もしあなたが、日々の業務に追われながらも「このままでいいのだろうか?」という漠然とした思いを抱えているなら、これはあなたのための記事です。
看護師・保健師のキャリアは「時給思考」に縛られやすい
看護職の働き方は、その構造上、「時間=収入」という、いわゆる「時給思考」に強く結びついています。シフト制で管理された勤務時間、分刻みで記録する業務、そして夜勤のような深夜手当や時間外労働。私たちの給与明細は、どれだけの時間、病院や施設等の「場所」に身を置いたかの証しでもあります。
この働き方は、資格を取得したばかりの頃は非常に合理的です。経験が浅くても、時間を費やして先輩の指導のもと業務をこなすことで、着実に給与を得ながらスキルを学ぶことができます。しかし、キャリアを重ねるにつれて、この「時給思考」が足かせになってくる現実があります。
経験年数が10年、15年と積み重なり、専門知識やアセスメント能力、困難な状況を乗り越える調整力が格段に向上しても、給与の伸びは緩やかになりがちです。リーダーや管理職になれば責任やプレッシャーは増大しますが、それに見合うだけの「自由」や「裁量」が手に入るとは限りません。むしろ、委員会の仕事や管理業務に追われ、患者さんと向き合う時間が減り、「本当にやりたかった看護はこれだっけ?」と自問自答することも増えるのではないでしょうか。
「夜勤をあと何回増やせば、もう少し収入が上がるかな」
「残業しないと、今日の業務は終わらない」
こうした思考は、私たちの時間と心身を少しずつすり減らしていきます。そして、ふと立ち止まったとき、「疲れ」や「迷い」となってキャリアの前に立ちはだかるのです。このままずっと、自分の時間を切り売りし続けるのだろうか。この働き方しか、私にはないのだろうか。
もしあなたが今、そんな息苦しさを感じているのなら、それはキャリアの危機ではありません。むしろ、新しい視点を取り入れる絶好の機会です。これまでの経験を違う角度から見つめ直し、新たな価値を見出すための転換点なのです。
「自分で価値を生み出す経験」が開くキャリアの可能性
「時給思考」から抜け出すための鍵、それは「自分で価値を生み出す経験」をすることです。これは、単に副業でお金を稼ぐという話ではありません。あなたがこれまで培ってきた看護の専門性や経験を、時間給の労働力としてではなく、独立した「商品」や「企画」として捉え直し、社会に提供してみるという、まったく新しい挑戦です。
最初は戸惑うかもしれません。しかし、この一歩があなたのキャリアに驚くほどの可能性をもたらします。
自分にしかできない「価値の切り口」に気づく
例えば、「小児科経験が長い」というキャリアを持つ看護師がいるとします。これを時給思考で見れば「小児科病棟で働けるスキル」ですが、価値創造の視点で見るとどうでしょう。「夜泣きに悩む新米ママのサポート」「子どもの急な発熱時に慌てないための家庭内トリアージ講座」といった、具体的な誰かの悩みに寄り添うサービスが見えてきます。あなたにとっては「当たり前」の知識や技術が、特定の誰かにとっては喉から手が出るほど欲しい「価値」なのです。自分の経験を棚卸しし、それを求める人に届けるプロセスを通して、あなたは自身の市場価値と、本当に情熱を注げる領域を再発見することになります。
臨床現場だけでは得られない、ポータブルなスキルが身につく
自分のサービスを形にするには、企画力が必要です。それを誰かに知ってもらうためには、発信力やマーケティングの知識が求められます。実際にサービスを提供し、対価をいただく経験は、交渉力や顧客対応能力を育みます。これらのスキルは、たとえ小さな活動であっても、間違いなくあなたのキャリアの資産になります。そして、このスキルは、将来あなたがどのようなキャリアを選択する上でも強力な武器となる「ポータブルスキル」なのです。
時間に縛られない働き方への確かな一歩となる
自分で生み出した価値が認められ、3,000円という対価を得る。この経験は、あなたの収入源を「時間」から解放する第一歩です。最初は小さな金額かもしれません。しかし、それは「自分の価値が、時間を切り売りしなくても収入に繋がる」という、何物にも代えがたい成功体験です。この経験の積み重ねが、将来的に「週3日は病院で働き、週2日は自分の事業を行う」「オンラインでの活動を中心に、場所に縛られずに働く」といった、より自由で主体的な働き方を実現するための礎となるのです。
「自分の商品3,000円」を売る経験は、キャリアの主導権を組織から自分自身に取り戻すための、最も効果的なトレーニングと言えるでしょう。
それって看護師にできるの?
「価値創造なんて言われても、看護師の私に何ができるの?」
そう思う気持ちは、とてもよく分かります。看護師は医療という専門性の高いフィールドで、決められた手順と役割の中で働くことに慣れています。だからこそ、自分で何かを「創り出す」ことに高いハードルを感じてしまうのです。
しかし、心配はいりません。あなたの中にある知識や経験、そして人柄そのものが、価値の源泉です。ここでは、看護師・保健師の資格や経験を活かした具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
例1:看護の専門知識をダイレクトに活かす
あなたの臨床経験は、そのまま誰かの悩みを解決する力になります。
- オンラインでの個別相談
「初めての育児で不安な母親向けのオンライン相談室」「がん患者さんのご家族の悩みを聞く傾聴サービス」「生活習慣病予備軍の方向けの食事・運動習慣サポート」など、あなたの得意分野で、悩んでいる人のパーソナルな相談に乗ることができます。 - 情報発信・コンテンツ販売
noteやブログ、動画などで専門的な情報を発信し、より深い知識をまとめた有料コンテンツ(例:「新人看護師のための急変対応マニュアル」「在宅介護で使える褥瘡予防の知識」)として販売することも可能です。
例2:保健師の視点を活かした企画
予防医療や地域住民の健康づくりに携わってきた保健師なら、より広い視野での活動が考えられます。
- 企業の健康経営サポート
従業員のメンタルヘルス対策や健康セミナーの企画・運営を請け負う。 - 地域向けの健康イベント企画
「親子で楽しむ食育イベント」「高齢者向け転倒予防体操教室」など、地域コミュニティを活性化させるような企画を立ち上げることもできます。
例3:趣味や好きなことと看護をかけ合わせる
あなたの魅力は、看護の知識だけではありません。趣味や特技と掛け合わせることで、ユニークで魅力的な価値が生まれます。
- アロマテラピー×看護
「ストレスケアのためのアロマ講座」「不眠に悩む人のためのリラックスアロマブレンドの販売」 - ヨガ×看護
「医療従事者のための腰痛改善ヨガクラス」「マタニティヨガ教室」 - イラスト×看護
「患者さんへの説明に使える可愛いイラスト素材の販売」「闘病記をマンガにするサービス」
これらのコツは「小さく始めること」です。最初から完璧な商品やサービスを目指す必要はありません。「まずは身近な友人や同僚の悩みを聞いてみる」「SNSで自分の得意なことについて発信してみる」など、誰かの役に立つことを、ほんの少し試してみる。その小さな一歩が、やがて大きな自信と実績に繋がっていきます。
なお、実際に活動を始める際には、勤務先の就業規則で副業・兼業が認められているかを確認することも忘れないようにしましょう。
行動してみよう:最初の一歩は身近な場所から
さて、ここまで読んで、少しだけ心が動き始めたあなたへ。最後に、具体的な行動の起こし方をお伝えします。壮大な計画は必要ありません。大切なのは、今日からでも始められる、ささやかでも確かな一歩を踏み出すことです。
最初の一歩は、発信から始めてみよう
自分の商品を作る、と考えると難しく感じるなら、まずはあなたの頭の中にある想いや知識を「発信」することから始めてみませんか。
XやInstagram、noteを使ってみる
無料で始められるこれらのプラットフォームは、あなたの考えを発信するのに最適です。「看護師として働く中で感じていること」「患者さんとの印象的なエピソード」「健康に関する豆知識」など、テーマは何でも構いません。文章を書くのが好きならnote、写真や短い動画で伝えたいならInstagramと、自分に合った方法で表現してみましょう。誰かの「いいね」やコメントが、あなたの価値を客観的に教えてくれる最初のサインになります。
一人で不安なら「ArchNurse」で一緒に活動してみるのもおすすめ
「発信が良いのは分かったけど、一人では何を書いていいか分からない」
「そもそも、自分の考えを発信するのが怖い」
「始めても、三日坊主で終わってしまいそう」
新しい挑戦に、不安はつきものです。一人で抱え込まず、同じ想いを持つ仲間と一緒に歩み始めるという選択肢があります。そこで、おすすめしたいのが、看護職の様々なキャリアを応援するコミュニティ「ArchNurse」です。
ArchNurseは、まさに「時給思考」から抜け出し、自分らしい価値を創造したいと願う看護師・保健師たちが集まる場所です。ここには、あなたと同じようにキャリアに悩み、新しい可能性を模索している仲間がたくさんいます。
ArchNurseの中で活動するメリットは計り知れません。
- 安心して挑戦できる心理的安全性
ここは完成品を発表する場所ではありません。不完全なアイデアを共有し、お互いにフィードバックし合いながら、安心して試行錯誤できる環境があります。失敗を恐れずに挑戦できる場所、それがArchNurseです。 - 具体的なノウハウと情報の共有
実際に自分のサービスを立ち上げた先輩や、特定の分野で活躍している仲間から、リアルな知識や経験談を聞くことができます。「こんなツールが便利だよ」「集客はこうやったらうまくいった」といった情報は、一人で手探りするよりも何倍も早くあなたを成長させてくれるでしょう。 - 仲間からの応援という最高のモチベーション
活動がうまくいかないとき、心が折れそうなとき、「頑張ってるね」「応援してるよ」という仲間の一言が、どれだけ力になることか。同じ志を持つ仲間との繋がりは、継続のための何よりの原動力になります。
一人で踏み出す勇気がまだ持てなくても、仲間と一緒なら、その一歩はぐっと軽くなります。「ArchNurseの中で一緒に活動してみる」という選択は、あなたのキャリアの可能性を安全かつ確実に広げるための、賢明な投資となるはずです。
ArchNurseに興味のある方はXからDMからご連絡ください。
「時給3,000円」の安定も、日々の生活を守る上で非常に大切です。しかし、一度でいいから、「自分の商品で3,000円」を得る経験をしてみてください。その経験から得られる自信、スキル、そして新たな人との繋がりは、金額以上の価値となってあなたの人生を豊かに彩ってくれるでしょう。
この記事が、あなたのキャリアの新たな扉を開くきっかけとなることを願っています。
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