看護師のウェルビーイングは「衣食住」から始まる?転職を考える前に見つめ直す、自分らしい生き方

衣食住から考える看護師の働き方とウェルビーイングについて

日々の激務に追われ、疲れが取れないと感じたり、「このままでいいのか」と不安になることはありませんか? その不安の原因は、もしかするとあなたの生活の基本—「衣食住」にあるかもしれません。転職を考える前に、まずは自分自身のウェルビーイングを見直し、心身の土台を整えることが、より充実した未来への第一歩となります。この記事では、忙しい看護師の皆さんがウェルビーイングを育むために取り入れやすいヒントを紹介し、自分らしいキャリアを築くためのスタートを切るお手伝いをしたいと思います。

目次

まずは自分自身のウェルビーイングから

「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉を、近年さまざまな場面で耳にするようになりました。単に病気ではないという状態を超え、心身ともに満たされ、幸福で、社会的に良好な状態であること——。それは、私たち看護師が日頃から患者さんのQOL(生活の質)向上を目指す中で、常に意識していることかもしれません。しかし、多忙な業務に追われる毎日の中で、「自分のウェルビーイングはどうだろう?」と立ち止まって考える機会は、意外と少ないのではないでしょうか。

患者さんのために奔走し、責任感の強い看護師の皆さんだからこそ、ともすれば自分のことは後回しにしてしまいがちです。しかし、質の高い看護を提供するためにも、私たち自身の心身の健康、つまりウェルビーイングが不可欠です。ウェルビーイングは決して特別なことではありません。まずは、私たちが日々を生きる基盤となる“衣食住”という生活の基本を整えることから始まるのではないでしょうか。

もしあなたが今、「なんだか疲れている」「このまま働き続けていいのか不安だ」「新しい環境に身を置きたい」と転職を考えているなら、少し立ち止まって、ご自身の“暮らし”を見つめ直してみませんか? 土台となるウェルビーイングを整えることが、より良いキャリア選択、そして自分らしい生き方へと繋がるはずです。この記事では、忙しい看護師の皆さんが自分自身のウェルビーイングを育むヒントとして、「衣」「食」「住」にフォーカスし、転職という選択肢も視野に入れながら、より充実した毎日を送るためのヒントを探っていきたいと思います。

ウェルビーイングとは

看護師にとってのウェルビーイング

では、改めて「ウェルビーイング」とはどのような概念なのでしょうか。世界保健機関(WHO)

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」 

と定義しており、ウェルビーイングはこの考え方をさらに発展させたものと言えます。

看護師として働く私たちにとってのウェルビーイングは、日々の業務を健康な心身で遂行できることはもちろん、仕事へのやりがいや充実感を感じ、プライベートな時間も自分らしく豊かに過ごせる状態を指します。それは、単に疲労がない、体調が良いというだけでなく、精神的な安定、人間関係の良好さ、そして人生に対する満足感なども包括した、より広範な概念なのです。

なぜ今、看護師のウェルビーイングが重要なのか

近年、医療現場の働く環境はますます厳しさを増しており、看護師の皆さんが抱えるストレスや負担も決して小さくありません。長時間労働、夜勤、患者さんやそのご家族からのプレッシャー、そして常に最新の知識や技術を学び続ける必要性など、その要因は多岐にわたります。

このような状況下で、看護師一人ひとりのウェルビーイングが損なわれてしまうと、バーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まり、離職へと繋がる可能性も否定できません。また、看護師のウェルビーイングの低下は、患者さんへのケアの質の低下にも繋がりかねないという懸念もあります。

だからこそ今、看護師の皆さんが自身のウェルビーイングに意識を向け、それを育むための具体的な方法を知り、実践していくことが非常に重要なのです。そして、その第一歩が、日々の生活の基盤となる「衣食住」を整えることから始まるのです。

【衣】心地よい自分でいられる服を着る – 自分を大切にする感覚を育む

毎日、患者さんのために清潔な制服や白衣に身を包み、プロフェッショナルとしての意識を高めて働く私たち看護師にとって、「私服を着る時間」は限られた貴重なものかもしれません。しかし、その限られた時間だからこそ、袖を通す服が、その日の気分を左右し、自分自身を整える大切な役割を果たすことがあります。

お気に入りの服を着たとき、ふと鏡に映った自分を見て、心がほんの少し嬉しくなる。何気ない休日でも、丁寧に服を選んで過ごすだけで、普段とは違う清々しい気持ちになれる。それは、「自分自身を大切に扱っている」という感覚に繋がります。忙しい毎日の中でも、自分の好きな色や素材の服を身につけることで、ささやかながらも心が満たされる瞬間を持つことができるのです。

また、職場では制服の下に着るインナーや、長時間立ち仕事でも疲れにくい靴下、そして足元を支える靴なども、自分の快適さにこだわってみることをおすすめします。直接肌に触れるものや、日々の動きを支えるものが心地よいと、仕事中のストレスが軽減され、集中力も高まることがあります。働きやすさはもちろんのこと、ふとした瞬間に目に入る色合いや、肌触りの良さが、私たちの気持ちにポジティブな影響を与えてくれることもあるでしょう。「何を着るか」という日常の選択は、単なる身支度ではなく「どう生きたいか」にも繋がっているのかもしれません。

もし今の職場環境や働き方にストレスを感じているなら、休日に自分が本当にリラックスできる服を選んで過ごす時間を作ってみてください。そして、もし転職を考えるのであれば、新しい職場でどのような服装で働くことになるのか、その環境が自分にとって心地よいものかどうかという視点も、選択肢の一つに加えてみるのも良いかもしれません。

【食】体と心をつくる“日々のエネルギー”を大事にする – 自分を労わる食習慣

夜勤や不規則なシフト勤務が多い看護師にとって、規則正しい食事のリズムを保つことは、まさに至難の業と言えるでしょう。「疲れて帰ってきて、ついコンビニのお弁当で済ませてしまう」「忙しさにかまけて、気づいたら1日1食しか食べていなかった」という経験を持つ方も少なくないはずです。

しかし、食事は単なる栄養補給の手段ではなく、私たちの体と心を作るための大切なエネルギー源であり、自分自身を労わるための行為でもあります。時間に追われる毎日だからこそ、少しだけ意識して、自分のための食事の時間を大切にしてみませんか?

例えば、疲れて帰った夜でも、簡単にできる野菜スープを温める。休日の朝には、お気に入りのパン屋さんで買ったパンとコーヒーで、ゆっくりと朝食を楽しむ時間を作る。夜勤明けには、温かいお味噌汁を飲んで、ホッと一息つく。そんな小さな食の習慣が、私たちの体に必要な栄養を届けるだけでなく、心にもじんわりと温かい栄養を与えてくれます。

また、食べることは「生きる力」に直結しています。自分の体調や気分と向き合いながら、「今日は何を食べたいかな?」「どんなものが今の自分の体にやさしいかな?」と問いかけることで、自然とセルフケアの視点も育まれていきます。忙しい毎日の中でも、意識的に自分のための食事を選ぶ時間を持つことは、心身の健康を維持し、ウェルビーイングを高めるための大切な一歩となるでしょう。

もし今の食生活に課題を感じているなら、転職を機に食生活を見直すことも考えてみましょう。例えば、食事が提供される職場を選ぶ、休憩時間がしっかりと確保できる職場を選ぶなど、食生活を改善しやすい環境を選ぶことも、長期的にウェルビーイングを保つ上で重要な要素となります。

【住】心が休まる居場所があるか? – 環境を整えることの重要性

私たちの生活の基盤となる「住」の環境は、ウェルビーイングに大きな影響を与えます。それは単に住む家だけでなく、働く環境、そして休息するための空間も含まれます。

働く環境:在宅勤務や学習スペースも“環境づくり”が大事

近年、看護師の働き方は多様化しており、病棟やクリニックだけでなく、訪問看護、産業保健、教育や研究など、さまざまなフィールドで活躍する方が増えています。また、テクノロジーの進化に伴い、デザインやライティング、マーケティング等の副業を在宅でする看護師も増えています。

そのような変化の中で、私たちが意識したいのが、「集中できる空間づくり」です。自宅で仕事や学習に取り組む際、テーブルの高さや椅子の座り心地、照明の明るさなど、ちょっとした環境の違いが、集中力や疲労度に大きく影響します。もし、長時間作業しても疲れにくい椅子を選んだり、目に優しい照明を設置したりするだけでも、作業効率は格段に向上するでしょう。

小さな違和感が積み重なると、思った以上に心身の負担となり、ウェルビーイングを損なう原因にもなりかねません。自分が仕事や学びに向き合うとき、心身ともに心地よく集中できるスペースがあるかどうか。それは、日々の業務を円滑に進めるだけでなく、将来のキャリアを支える大切な「住」の一部なのです。もし今の働く環境に不満を感じているなら、転職を考える際に、働く場所の環境だけでなく、休憩スペースの有無や、働きやすい設備が整っているかなども、重要な判断基準となるでしょう。

休む環境:オンオフの切り替えができる場所を

忙しい看護業務の中では、「休む」という行為すら後回しにされがちです。家に帰ってからも、何となくSNSを眺めたり、目的もなくテレビをつけっぱなしにしてしまったり……。しかし、それでは心身は十分に休息できず、疲労が蓄積してしまう一方です。

“意識的に休む”時間を持つことで、私たちの心身はしっかりと回復し、明日への活力を養うことができます。例えば、リビングの一角にお気に入りのクッションを置いて、温かい飲み物を飲みながら静かに読書をするだけのスペースを作る。間接照明を灯して、リラックスできる音楽を聴く時間を設ける。観葉植物を置いて、自然を感じられる空間を作る。

そんな“自分だけの休息空間”があると、「あ、今は休んでいい時間なんだ」と体も心も自然と切り替えやすくなります。オンとオフを意識的に切り替えることで、仕事のストレスから解放され、心身のリフレッシュに繋がり、日々のウェルビーイングを高めることができるでしょう。もし今の住環境でリラックスできるスペースがないと感じているなら、模様替えをしてみたり、思い切って引っ越しを検討してみることも、ウェルビーイングを高めるための有効な手段かもしれません。転職を考える際には、通勤時間や住居手当の有無など、住環境に影響する要素も考慮に入れることが大切です。

寝る環境:快眠できることは最大のメンテナンス

不規則な勤務や夜勤がある看護師にとって、睡眠の質をどう確保するかは、まさに切実な問題です。睡眠不足は、集中力や判断力の低下、免疫力の低下、そして精神的な不安定さなど、様々な不調を引き起こす可能性があります。

寝具の肌触りや枕の高さ、遮光カーテンやアロマなど、「自分にとって心地よい眠り」のための環境を整えることは、何よりのセルフケアです。寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見るのを避けたり、決まった時間に照明を落とすなど、小さな習慣の積み重ねが、睡眠の質を大きく高めてくれます。

「ぐっすり眠れた」「朝すっきり起きられた」——そんな感覚がある日は、自然と気持ちも前向きになり、日中のパフォーマンスも向上しますよね。良質な睡眠は、心身のリセットだけでなく、明日の的確な判断力や感情の安定にも繋がり、結果として、より良いキャリアの選択をすることにも繋がっていくのです。“眠る環境を整えること”は、単なる休息ではなく、未来の自分への投資と言えるでしょう。もし慢性的な睡眠不足に悩んでいるなら、睡眠環境を見直すだけでなく、思い切って睡眠に特化した医療機関に相談してみることも、ウェルビーイングを高めるための重要な一歩となるかもしれません。転職を考える際には、夜勤の頻度や勤務時間など、睡眠時間に影響を与える要素をしっかりと確認することも、長期的な視点で見ると非常に重要です。

参考)第2回 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会 令和5年9月29日
健康づくりのための睡眠指針の改訂について(案)

キャリアの前に、“自分”を整えること – 日々の暮らしを見つめ直す

看護師としてのキャリアを考えるとき、「どこで働くか」「どんなスキルを身につけるか」といった外側の選択にどうしても目が向きがちです。もちろん、それらの要素も非常に重要ですが、本当に大切なのは、どんな自分でその道を歩んでいくか、ということです。

そのためには、まずは日々の暮らしを見つめ直し、“衣食住”という生活の基盤から自分自身を丁寧に整えていくことが、力強く未来を切り開いていくための大きなエネルギーとなります。「なんだか最近、疲れがとれないな」「この先どう働けばいいのか分からない」——もし今、そんな風に感じているなら、焦ってキャリアチェンジを考える前に、まずはご自身の“暮らし”に意識を向けてみませんか?

心地よい服を身にまとい、体に優しい食事を摂り、心安らぐ住環境を整える。それらは決して特別なことではなく、私たちが日々の生活の中で意識的に取り組むことができることです。そして、それらの積み重ねが、私たちの心身のウェルビーイングを高め、より良いキャリア選択をするための土台となるでしょう。

あなたの毎日が、少しでも心地よく、満たされたものでありますように。そして、ウェルビーイングを土台とした、あなたらしい輝かしいキャリアを築いていけることを心から願っています。もし、それでも現状を変えたいという強い思いがあるならば、しっかりと自分自身と向き合い、ウェルビーイングを高めた状態で、自信を持って次のステップへと進んでください。

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この記事を書いた人

けんいちのアバター けんいち キャリアコンサルタント

看護師の転職支援に約10年携わり、2019年に国家資格キャリアコンサルタントを取得。
2020年に看護師キャリアコミュニティ「ArchNurse」を立ち上げ、キャリア支援のプロジェクトを複数展開しながら、産業保健、健康経営関連サービスの企画職として従事。

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