看護師の経験を土台に、海外生活と公衆衛生で拓くキャリアの扉

看護師からの海外と公衆衛生のキャリア

こんにちは。ArchNurseメディア運営チームです。今回は病院での勤務をして海外生活、その後大学院へ進学をし現在は一般企業で働いているブルーベリーさんのキャリアに関する記事です。海外や大学院を考えている方にとって参考になる記事になっていますので、参考にしてもらえると嬉しいです。

この記事を書いてくれた人

ブルーベリー【チャーニカ】
院や海外放浪の経験を経てヘルスケア企業でサラリーマンになった看護師。医療ビッグデータを使って、人々が元気に生活できる社会をつくるために日々苦悩中。
こう見えてオンラインより対面派。直接会って話すからこそ人は理解し合えると考えるアラフォー。
趣味はお酒、旅行、良質な安宿探し

目次

自分が看護師になるとは思いもしなかった学生の頃

看護師を目指していなかった

ーー看護師になったっきっかけを教えてください

高校生の頃は理学療法士(以下PT)になりたいと思っていて、看護師を目指していませんでした。元々陸上やバスケットボールなどの部活をやっていたのですが、怪我が多かったのでよく病院のPTさんのお世話になっていました。その影響で自然とPTの仕事に憧れていました。

ただ、当時のセンター試験で理学療法専攻のある大学の合格ラインの点数を取れず、浪人できるような経済状況でなかったため、深く考えもせずに同じ医療職である看護学専攻のある地元の大学へ進学しました。

大学での経験

大学での授業や実習の中で看護を学んでいくにつれて看護師という仕事への興味が高まってきたと思います。病院実習で、とある患者さんとそれまでの生活やこれからの人生について語り合ったことがあるのですが、「若いうちは興味のあることはできるだけやった方がいい。」という言葉は、その後の私に大きな影響を及ぼしていると思います。その言葉もあって、最初は興味のなかった看護だけど一度はやってみようと考えるようになりました。

辛かった新人看護師時代と海外生活、そしてその後

新人看護師時代

ーー看護師時代にきつかったことや海外へ行くことになった経緯について教えてください

大学卒業後は地元を離れて、福岡県の総合病院の小児科で勤務しました。新人の頃は仕事を覚えるのに時間がかかり、先輩方から厳しい指導の毎日でした。業務的にも緊急入院などのイレギュラー対応の多い部署だったため、日々忙しく働いていました。そのため、身体的にも精神的にも追い詰められていたので、毎日のように吐いていました。

なんとか一年勤務すると仕事も慣れてきたおかげで精神的に楽になってきたと思います。同期と飲みや旅行に行ったりして、忙しい業務の中でも楽しく生活できていました。

海外生活とバックパッカー

子供の時から海外への漠然とした憧れがあったので、看護師を3年経験したら海外で生活するということを決めていました。滞在先の国はどこでもよかったのですが、時差もほとんどなく当時物価もそこまで高くなかったオーストラリアへワーキングホリデー制度を利用して行くことにしました。

オーストラリアでは看護のことは忘れて気の赴くままに生活してみようと思っていたので、語学学校に通ったり、朝から晩までパブ巡りを楽しんだり、ファーム(農場)でアルバイトをしてお金を稼いだり、日本では経験できないような日々を送っていました。

そのまま日本に帰ろうとしていた時期に、同じシェアハウスで生活していたプロサッカー選手がいたのですが、彼が教えてくれた「行かずに死ねるか!」という自転車で世界を旅する旅行記を読んで、他の国を気ままに放浪することへの興味が出てきたんです。なので、直接帰国せずにアジアの国々を巡ることにしました。結局、アジアの6か国を数か月かけてバックパッカーとして巡って日本に帰国してきました。

帰国後の話

帰国後は地元の九州を離れて関西の大学病院で働くことにしました。関西を選んだ理由は海外で知り合った友人の多くが関西在住だったからです。大学病院では救急や外科病棟で勤務していましたが、勤務していた大学病院は生活保護や路上生活者が多く、彼らと接することが多かったです。

その中で私と同じ日本で生活している自分とは異なる価値観や文化を持っていること気づきました。例えば、日本で生まれたのに文字を書けない人、家族に見放されて天涯孤独で生きている人など、これまで出会うことのなかった人との関わりは自分の中でかなり衝撃的で、そんな境遇にいる人たちへの興味や関心が芽生えてきました。どうにか彼らのためになることはないかなと様々な分野の大学院を訪問していた時に出会ったのが、公衆衛生という学問でした。

一般的に公衆衛生は、統計学を用いて数のデータを分析して対象となる大きな集団の特徴や問題を明らかにして解決策を考える学問です。一見、路上生活者や生活保護というマイノリティに対しては公衆衛生の概念は相いれないものだとは思っていました。

しかし、後に私の指導教官となる公衆衛生大学院の教授に「公衆衛生の世界では大きな集団の中に隠れている小さな集団に対するアプローチはあまりなされていないので、君の問題意識は公衆衛生に必要だ」という言葉をかけていただき、公衆衛生大学院へ進学することにしました。

大学院に進学したからこそ見えた自分のやりたいこと

路上生活者支援活動などから学んだこと

ーー大学院を目指すきっかけや学び、キャリアへの影響があれば教えてください。

関西を離れて関東の大学院に進学しました。大学院では統計や疫学、保健政策などの座学とともに路上生活者支援に関わりました。臨床の病院ではデータを扱う経験が少なく、授業の中で初めて見るデータの形、数式、統計分析手法、統計ソフトなどの理解にかなり苦労しました。幸いにも大学院時代の同級生が丁寧に教えてくれたので、なんとか単位を取ることができました。授業で学んだデータ集計の方法などは、一般企業で働く中でも活かせていると感じています。

また、東京の中でも路上生活者が多く生活されている台東区の山谷で路上生活者支援活動に参加させていただきました。この時期は、新型コロナウイルス感染症流行による社会活動自粛の時期だったため、多くの支援活動が停滞せざるを得ない状況でした。そのため、普段炊き出しや声かけなどで社会とのつながりを保てていた路上生活者が孤立しており、一刻も早い支援再開が求められていました。活動自粛を求める社会状況であっても最低限支援できる方法を支援者のみんなで相談して支援活動を行うという経験から、「困難な状況でも物事を前に進めて自分たちのミッションを達成させる」という、一般企業でも重要な心構えを学ぶことができました。

大学院卒業後は一般企業へ就職し、転職も経験

大学院卒業後は2社の企業での勤務を経験しました。

1社目は物流系企業で事業開発や業務改善などの業務を担当しました。特に、インドや台湾などの海外のお客様との協同事業では、病院で勤務した経験や大学院で学んだ経験を活かして

海外の医療関係施設の調査を行い、現場での課題やニーズなどをヒアリングして報告書にまとめるという活動を行いました。この時、海外のお客様から「日本の医療従事者の視点で現場を見てくれて大変参考になった。」という言葉をいただき、病院で看護師として働いた経験は無駄ではなかったと感じることができました。海外の方と働くことは非常にやりがいを持って取り組んでいたのですが、もっと自分の経験を活かすことのできる分野で働きたいと思い2社目の企業へ転職しました。

2社目はヘルスケア企業で自治体向けサービスの部署で勤務しています。いわゆる社内ベンチャー的な立ち位置の部署で、営業・サービス運用と開発などのカスタマーサポートとカスタマーサクセスと営業を合わせたような業務を担当しています。アサインされる業務の範疇がかなり広く業務負荷が大きいのですが、その反面、お客様の一番近くに寄り添いながら現状のサービス提供から新規提案を行えるということに面白さを感じています。

モチベーションを維持するのが難しかった企業への転職活動

ーー企業への転職活動の方法や良かったこと、苦労したことがあれば教えてください

私の転職活動の実際

①転職エージェントサービスの登録

医療業界以外への転職を希望していたので、一般の方々が利用する転職エージェントサービスに登録しました。転職エージェントに登録すると、非公開求人の紹介や転職に関して多くのサポートを受けることができるため、転職活動の際は必ず利用した方がよいと思います。登録したサービスは以下の通りです。

  • マイナビエージェント 
  • DODA 
  • JACリクルートメント 
  • リクルートエージェント 
  • ビズリーチ

他にもいくつかの転職エージェントに登録しましたが、多くの転職エージェントの担当者の方と話をして、自分に合ったエージェントを利用するといいと思います。

②履歴書・職務経歴書作成(証明写真)

求人案件に応募するために履歴書と職務経歴書を作成しました。履歴書と職務経歴書はDODAのホームページから取得しました。

証明写真はカメラのキタムラでプロのカメラマンに2,000~3,000円くらいで撮影してもらいました。転職活動でインスタント照明写真はあまり使用しない方がいいらしいです。この段階である程度、必要書類を作成しておいたので、後々の活動が楽になりました(応募企業に合わせて志望動機を変えるだけで済むため)。

③資格取得(TOEIC、第一種衛生管理者免許)

少しでも書類選考の通過率を上げるためにいくつかの資格を取得しました。TOEICについては1年間に4回受験しました(700点台後半)。また、保健師免許を保持していたので、第一種衛生管理者免許も取得しました。実際、面接の際TOEICのスコアや衛生管理者の資格について評価されたこともあったので、多くの資格を取得しておいてよかったと思います。

④企業研究

応募企業について調査しました。調査内容としては企業理念、事業内容、従業員数、推進事業など多くのことをホームページなどから調べました。また、転職口コミサイトから過去の内定者からの口コミなども参考にしました。

⑤面接対策

実際10社くらいの企業の面接を受けました。面接を受け始めた最初の頃は対策をしていなかったため、上手く回答することができませんでした。対策していない=自分の考えをまとめきれていないということなので、先方企業には大変失礼な対応をしていたと反省しています。そこで面接対策として、実際に考えたことを下記に記載します。

・転職の軸
自分はどのような仕事・業種に就きたいか?
・志望理由
応募企業を志望した理由について検討しました。企業の業務内容やミッション・ビジョンと絡めて意見を述べられるよう準備しました。
・自分の強み・弱み
自分の性格で強みだと思える点、逆に弱みと思う点さらにその弱みをどのように克服・カバーしているか?など
・業務上の成功例・失敗例
これまでの仕事で成果を挙げた事例について(どのような問題に対してどのような介入をしたか?どのようにステークホルダーを巻き込んだのか?)。また、失敗した事例についても検討し、その失敗をどのように乗り越えたかなど考えました。
・キャリアビジョン
応募企業に入社して数年後にどのような人材になっていたいか?どのような業務に従事していたいか?社会に対してどのようなインパクトを残せる人材になっていたいか?など検討しました。
・企業で何をしていきたいか
応募企業に入社して最初にどのようなことをしたいか検討しました。
面接対策については考え始めるとキリがないのですが、対策を進めるにつれて自分の考えがはっきりしてくるので対策してよかったと思います。

医療業界以外で活躍している医療職の方と交流


転職活動とは直接関係がないのですが、医療業界以外での働き方を知りたいと思い、そのような方々とSNS上で交流し始めました。交流を続けている内に直接お会いして情報交換することもあり、転職活動に大変活かすことができたと思います。2社目への転職を検討していた際にもSNS上で仲良くして下さった方から、現在の会社を紹介していただくこともあり、SNSを使った転職活動も可能性を秘めているかもしれないと思います。

良かったことや苦労したこと

転職活動をして良かったことは、自分の価値を知ることができたことです。実際に求人に応募する際は企業研究を行って、その企業のサービス内容などを調べるのですが、誰にサービス(価値)を提供してお金をいただいているのか、どんな課題を解決しているのかなどを洗い出して、自分がその中でどこに貢献できるのか考えることでそれまで見えなかった自分の価値を把握できたことが非常に良かったです。

一方で、転職活動を継続するモチベーションを持続することに苦労しました。転職活動は求人企業の情報収集、応募、書類選考、複数回の面接など一定のプロセスがありますが、いつまで続ければいいのか活動中には見えないことが精神的に辛かったです。特に、仕事をしながら転職活動をしたこともあって、本業の業務が終了した後に転職活動の時間を捻出することも難しかったです。

これからやりたいこと

将来的には現場を統括できるマネージャー職につきたいと考えています。現在は現場で複数のお客様の前に立つことも面白いと思いますが、複数の案件を統制する立場に立って現場を動かしていくことを目標にしています。そのために、ヒアリングスキルや提案力などのお客様とのコミュニケーション力、業界の法律やルールを、業績管理方法などを身に着けていきたいと考えています。

まずはヘルスケアの領域から人々の健康という側面に関わることで、間接的に私の問題意識である社会の片隅にいる路上で生活する方々を減らしていければいいなと思います。また、海外との関わりも続けていきたいので、どこかのタイミングで海外と関わるビジネスをできればいいなと思います。そのために、これからも色んな分野で活躍されている人、これから活躍する人など多くの方と交流し続けていきたいです。

様々な分野の方と交流を続けていくという文脈で、赤羽会という主に公衆衛生を学ぶ方々の集まるイベントも定期的に運営しております。それぞれの現場で頑張っている方々が一同に集まってお酒を酌み交わしながら、将来について語り合う非常に素敵に空間だと思っています。赤羽会の活動に関心のある方はご気軽にご連絡ください。

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